安倍内閣は2012年12月の発足から間もなく2年を迎えます。この間の世論調査(「朝日」世論調査を中心に)から浮かび上がるその動向の特徴について、3点整理しました。
厳しさ増す国民の視線 支持率下落へ
●1つは、安倍内閣の支持率が有権者の厳しい視線を受けて、下落の傾向にあることです。
内閣支持率 2013年 12月 59%(内閣発足直後)
13年 5月 66%
14年 7月 42%
(集団的自衛権行使容認の閣議決定直後)
14年 10月 49%(内閣改造後)
内閣発足後の支持率は5割~6割台を維持。経済政策を「評価する」人が63%(2013年5月)と、経済政策への期待を反映していることがうかがえました
●しかし、ことし4月の調査以降、支持率は5割を切って低下。9月に入ると、内閣改造がおこなわれたものの、支持率は50%を回復できない状態が続いています。共同通信の10月の世論調査でも内閣支持率は48.1%となり、9月の調査に比べ6・8㌽下回っています。
●内閣支持率の下落傾向は、特定秘密保護法や集団的自衛権、原発再稼働などに対する国民の厳しい見方の影響を受けています。いずれも安倍内閣の重要政策であり、それぞれの政策を通して同内閣の政治全体と国民との矛盾が拡大しているのです。現に、集団的自衛権の行使容認閣議決定(7月)後、内閣支持率は42%にまで落ち込みました。
特定秘密保護法 このまま施行 16.7%
修正・廃止 74.8%
(「共同」1月世論調査)
集団的自衛権の行使容認 賛成 31.3%
反対 60.2%
(「朝日」8月4日付)
原発の再稼働 賛成 29%
反対 55%
(「朝日」10月27日付)
●安倍内閣がここにきて懸念を深めざるを得ないのは、看板政策の経済政策への支持さえ急速にしぼんでいることです。
首相の経済政策に 「期待できる」 37%
「期待できない」 45%
(「朝日」10月27日付)
来年10月の消費税10%への引き上げについても、「反対」が初めて7割を超えて71%に達しています。国民の生活苦の広がりが読み取れます。
加えて、「政治とカネ」の問題が相次いで発覚していることも、自民党政治の金権腐敗体質をあらためて浮き彫りにしています。小渕優子前経済産業相が同問題で辞任したことについて、「辞めたのは当然だ」は65%で、「辞める必要はなかった」の23%を大きく上回っています。
●そもそも2012年12月の総選挙で誕生した安倍内閣に、国民の積極的な支持があったわけではありません。
自民党の得票は、比例区で投票者数の28%、1662万票、全有権者約1億人のなかの割合では比例区は16%を獲得したにすぎません。
自民党が議席を伸ばした理由についても、「民主党政権に失望した」が81%と圧倒的に多く、「自民党の政策を支持した」は7%にとどまっています。
最近も同内閣を「支持する」と答えた人でさえ、「支持を続けるとは限らない」が54%と半数を超えています(「朝日」10月7日付)。安倍内閣の支持基盤が盤石とはいえないことが示されています。
高水準で定着する無党派層 その背景と共同の意義
●2つめの特徴は、支持政党の問いに「支持政党なし」「答えない・分からない」と答える無党派層が第2次安倍内閣発足時の3割台からじわじわと上昇し、高水準で定着していることです。
無党派層の推移 2012年 12月 34%
13年 6月 45%
14年 4月 56%
14年 10月 50%
●政党支持率の推移
12年12月19日 14年10月27日
自民党 31% 37%
公明党 3% 3%
民主党 11% 6%
共産党 2% 2%
維新 9% 1%
みんな 3% 0%
これらの推移から無党派層の増加の多くは、民主、維新、みんなの支持層から回ったことがうかがわれます。
民主党についていえば、消費税増税もTPP(環太平洋連携協定)も原発再稼働も、集団的自衛権の行使容認にも、党として反対を表明できない状況が続いています。安倍内閣との対決軸を示せないことが同党の支持率下落の要因との見方は妥当というべきでしょう。
●無党派層の政治動向(日本経済新聞4月21日付世論調査)
集団的自衛権の行使容認 無党派層の賛成22%
消費税10%増税 無党派層の反対67%
安倍内閣の重要政策について、無党派層が批判的であることが浮き彫りとなっています。現状の打開をめざそうとする限り、増大する無党派層との共同は極めて重要です。
増える若者の“決起” キーワードは「危機感」
●3つめの特徴は、若い世代で以前より政治に声を上げ、行動する人が増えていることです。
集団的自衛権行使容認への年代別反対(「共同」8月世論調査)
若年層(20~30代)の反対 69.7%
中年層(40~50代)の反対 57.5%
高年層(60代以上)の反対 55.2%
集団的自衛権は米国などの戦争のさい、日本が攻撃されていなくても攻撃に加わること。これまで憲法9条に照らして否定されてきましたが、安倍内閣は行使容認の閣議決定を行いました。これについては若年層の反対が中年層や高年層の反対を10㌽余り上回り、行使容認に不安感を強める実態が浮かび上がっています。
●国民の知る権利やプライバシーを侵す恐れのある特別秘密保護法についても、昨年12月に成立したことで、「法律は通ってしまった」との声もありましたが、10月25日の東京・渋谷での廃止デモには学生ら約2000人が参加。ヒップホップ音楽に乗せてラップ調の抑揚で反対をコールしました。
●こうした若い世代の“決起”の背景について作家の雨宮処凛さんは、「10代で東日本大震災を経験した彼らは(社会への)危機感が強く、自分の言葉で語っていた」(「毎日」10月26日付)と指摘。その行動を探るキーワードは「危機感」だといいます。
実際、「日本の将来がとても不安で、怖い」との声を上げる高校生(17)は、合わせて「『戦争ができる国」にしたくありません」「このままの平和な日本で、誇れる国でありたい」と述べています(「朝日」7月17日付)。秘密保護法反対のデモを企画した学生(22)も、同法の制定に「ただならぬ雰囲気」を感じ、自ら声を上げようと決意したと語っています(「東京」8月15日付)。
集団的自衛権や秘密保護法に「危機感」を覚えつつ、平和や民主主義の声を上げる若い世代。憲法の平和的・民主的な理念が次の時代を担う世代に確かに受け継がれていることに、希望を持ちたいと思います。