2014年10月31日金曜日

研究レポート  世論調査が示す安倍内閣の動向

 
  安倍内閣は2012年12月の発足から間もなく2年を迎えます。この間の世論調査(「朝日」世論調査を中心に)から浮かび上がるその動向の特徴について、3点整理しました。

厳しさ増す国民の視線 支持率下落へ  
  ●1つは、安倍内閣の支持率が有権者の厳しい視線を受けて、下落の傾向にあることです。
       内閣支持率  2013年 12月  59%(内閣発足直後)
                      13年   5月  66%
                     14年   7月  42%
                                            (集団的自衛権行使容認の閣議決定直後)
                            14年 10月  49%(内閣改造後)
  内閣発足後の支持率は5割~6割台を維持。経済政策を「評価する」人が63%(2013年5月)と、経済政策への期待を反映していることがうかがえました
  ●しかし、ことし4月の調査以降、支持率は5割を切って低下。9月に入ると、内閣改造がおこなわれたものの、支持率は50%を回復できない状態が続いています。共同通信の10月の世論調査でも内閣支持率は48.1%となり、9月の調査に比べ6・8㌽下回っています。
  ●内閣支持率の下落傾向は、特定秘密保護法や集団的自衛権、原発再稼働などに対する国民の厳しい見方の影響を受けています。いずれも安倍内閣の重要政策であり、それぞれの政策を通して同内閣の政治全体と国民との矛盾が拡大しているのです。現に、集団的自衛権の行使容認閣議決定(7月)後、内閣支持率は42%にまで落ち込みました。
  特定秘密保護法     このまま施行  16.7%
                      修正・廃止   74.8%
                                            (「共同」1月世論調査)
 集団的自衛権の行使容認 賛成     31.3%
                         反対    60.2%
                         (「朝日」8月4日付)
  原発の再稼働            賛成      29%
                         反対         55% 
                                            (「朝日」10月27日付)    
  ●安倍内閣がここにきて懸念を深めざるを得ないのは、看板政策の経済政策への支持さえ急速にしぼんでいることです。
   首相の経済政策に  「期待できる」        37%
                               「期待できない」       45%
                              (「朝日」10月27日付)
  来年10月の消費税10%への引き上げについても、「反対」が初めて7割を超えて71%に達しています。国民の生活苦の広がりが読み取れます。
  加えて、「政治とカネ」の問題が相次いで発覚していることも、自民党政治の金権腐敗体質をあらためて浮き彫りにしています。小渕優子前経済産業相が同問題で辞任したことについて、「辞めたのは当然だ」は65%で、「辞める必要はなかった」の23%を大きく上回っています。
  ●そもそも2012年12月の総選挙で誕生した安倍内閣に、国民の積極的な支持があったわけではありません。
  自民党の得票は、比例区で投票者数の28%、1662万票、全有権者約1億人のなかの割合では比例区は16%を獲得したにすぎません。
  自民党が議席を伸ばした理由についても、「民主党政権に失望した」が81%と圧倒的に多く、「自民党の政策を支持した」は7%にとどまっています。
  最近も同内閣を「支持する」と答えた人でさえ、「支持を続けるとは限らない」が54%と半数を超えています(「朝日」10月7日付)。安倍内閣の支持基盤が盤石とはいえないことが示されています。

高水準で定着する無党派層 その背景と共同の意義
  ●2つめの特徴は、支持政党の問いに「支持政党なし」「答えない・分からない」と答える無党派層が第2次安倍内閣発足時の3割台からじわじわと上昇し、高水準で定着していることです。
  無党派層の推移   2012年 12月 34%
                      13年   6月 45%
                      14年   4月 56%
                      14年 10月 50%
  ●政党支持率の推移 
                       12年12月19日 14年10月27日         
          自民党       31%       37%
         公明党        3%        3%
         民主党       11%        6%
         共産党        2%        2%
            維新        9%        1%
         みんな        3%         0%
  これらの推移から無党派層の増加の多くは、民主、維新、みんなの支持層から回ったことがうかがわれます。
  民主党についていえば、消費税増税もTPP(環太平洋連携協定)も原発再稼働も、集団的自衛権の行使容認にも、党として反対を表明できない状況が続いています。安倍内閣との対決軸を示せないことが同党の支持率下落の要因との見方は妥当というべきでしょう。
  ●無党派層の政治動向(日本経済新聞4月21日付世論調査)
        集団的自衛権の行使容認   無党派層の賛成22%
        消費税10%増税           無党派層の反対67% 
  安倍内閣の重要政策について、無党派層が批判的であることが浮き彫りとなっています。現状の打開をめざそうとする限り、増大する無党派層との共同は極めて重要です。

増える若者の“決起” キーワードは「危機感」
  ●3つめの特徴は、若い世代で以前より政治に声を上げ、行動する人が増えていることです。
       集団的自衛権行使容認への年代別反対(「共同」8月世論調査)
           若年層(20~30代)の反対 69.7%
           中年層(40~50代)の反対 57.5%
           高年層(60代以上)の反対  55.2%
  集団的自衛権は米国などの戦争のさい、日本が攻撃されていなくても攻撃に加わること。これまで憲法9条に照らして否定されてきましたが、安倍内閣は行使容認の閣議決定を行いました。これについては若年層の反対が中年層や高年層の反対を10㌽余り上回り、行使容認に不安感を強める実態が浮かび上がっています。
  ●国民の知る権利やプライバシーを侵す恐れのある特別秘密保護法についても、昨年12月に成立したことで、「法律は通ってしまった」との声もありましたが、10月25日の東京・渋谷での廃止デモには学生ら約2000人が参加。ヒップホップ音楽に乗せてラップ調の抑揚で反対をコールしました。
 ●こうした若い世代の“決起”の背景について作家の雨宮処凛さんは、「10代で東日本大震災を経験した彼らは(社会への)危機感が強く、自分の言葉で語っていた」(「毎日」10月26日付)と指摘。その行動を探るキーワードは「危機感」だといいます。
  実際、「日本の将来がとても不安で、怖い」との声を上げる高校生(17)は、合わせて「『戦争ができる国」にしたくありません」「このままの平和な日本で、誇れる国でありたい」と述べています(「朝日」7月17日付)。秘密保護法反対のデモを企画した学生(22)も、同法の制定に「ただならぬ雰囲気」を感じ、自ら声を上げようと決意したと語っています(「東京」8月15日付)。
   集団的自衛権や秘密保護法に「危機感」を覚えつつ、平和や民主主義の声を上げる若い世代。憲法の平和的・民主的な理念が次の時代を担う世代に確かに受け継がれていることに、希望を持ちたいと思います。

2014年10月30日木曜日

まな板大のアジ

  近所の方からアジをいただきました(写真)。けさ、乗り合い船で釣ってきたばかりといいます。
  尾がピンと跳ね上がり、ぷっくりしたアジ。計ると36㌢ありました。
  早速、一夜干しに挑戦。二枚に下ろしたのち、塩水につけました。
  味わうのが楽しみです。

2014年10月25日土曜日

新聞を読んで 原発再稼働反対に共感

最近、印象に残った新聞記事があります。「毎日」10月21日付でコラムニスト中森明夫氏が朝日新聞に対するバッシング問題などについて述べた記事です。一部を紹介します。

中森氏は30年余、ライターとして雑誌の世界で活躍してきた人物。その氏から見ても、今回の「朝日」の「従軍慰安婦」報道問題等に対する雑誌の「売国」「断末魔」「メルトダウン」という決めつけは、「ヘイトスピーチ的」だと指摘します。
自分のホームグランドがこんな形で「溶解」するのは耐え難いと語り、「まともな読者は嫌気がさして逃げ出している」との“情報”も紹介しています。

中森氏は続いて、福島第一原発の吉田昌郎所長が東日本大震災当時の対応について聴取を受けたさいの「吉田調書」にも言及。衝撃的なのは福島原発事故で「東日本が壊滅の危機にあった」との証言だといい、なぜこの事実にもっと大騒ぎしないのか、国民の命より朝日批判のほうが大事なのかと、マスコミのあり方に疑問を投げかけています。
原発の再稼働に反対だと明言する氏。「自分に子供がいなくて本当によかったと最近は思う。私は死んでしまえばいい。だが、子供たちは……。日本の未来は暗い。私のようなサブカルライターがこんなことを書くようになったら末期だ」
つぎの時代を担う子どもたちと日本の前途を深く憂慮しています。

たしかに福島第一原原発は事故から3年7カ月が経過しましたが、原子炉格納容器のなかにある核燃料はいまなお行方不明状態です。汚染水問題もトラブル続きです。東電社長は2014年度中の浄化完了を約束していましたが、いまから24時間フル稼働してもその達成は厳しいといいます(「朝日」10月17日付)。また、原発事故の避難中に病気や自殺で亡くなった人は少なくとも1千人を超します。
こうしたなか、国民の世論と運動の力で「稼働原発ゼロ」が続く一方、安倍首相は鹿児島県川内原発の再稼働に突き進む方針を明らかにしています。

中森氏の勇気ある発言に接し、その見識に共感を覚えるとともに、原発の再稼働は許せない、政府は「原発ゼロ」の決断をと、あらためて思いました。

2014年10月22日水曜日

当事者意識もずれていた 

  「うちわ」の松島みどり前法相の「再生可能な失敗」との無反省な弁明にはあきれ果てましたが、「観劇」の小渕優子前経済産業相の釈明も驚くものでした。

  小渕氏の観劇会をめぐる問題では、収支のずれとして2010~12年の3年間だけでも5000万円超に上ります。こんな大きなお金はいったいどこに行ったのでしょうか。あるいは肩代わりしたのか。政治資金規正法の虚偽記載や公職選挙法の買収という法律違反の疑いが浮上しているのです。

  ところが小渕氏は会見(20日)で収支問題について、「私自身大きな疑念を持った」「わからないことが多すぎる」と発言。これでは自身の団体の問題であるのに、「とのこと」の連発と合わせて、まるで他人事であり、氏が被害者であるかのように聞こえます。

  同氏の疑惑ではワインを群馬県の選挙区内の有権者に贈った問題も明るみにでています。氏の全身や顔の写真がラベルで貼られている同ワイン。有権者への利益供与を禁じた公選法に違反する疑いがあります。
  ところがこの問題でも、ワインの存在を認めた上で「私が渡したということではない」と辞任会見で答えました。

  小渕氏は、収支のずれに加えて、当事者意識も相当ずれているのではないでしょうか。これは政治資金を企業献金という“他力”や、政党助成金という国民の税金に頼っていることとも無関係ではないはずです。
  「(こんごは)一議員として」といいますが、国会議員としての資質自体、厳しく問われています。

2014年10月21日火曜日

国民の生活防衛を知っていますか

  近所の生協は月曜日が「スーパーマンデー」です。食料品等を普段より安く買うことができる日とあって、平日にもかかわらず大勢の買い物客が詰めかけています。

  いま、庶民の生活防衛はさまざまな形で広がっています。涙ぐましい努力も少なくありません。
  雨の日の新聞を包むビニール袋をゴミ袋に再利用する、ティッシュやラップの使用を減らす、散髪は格安の店で済ませる、帽子やワンピースなどの衣服の手縫いに挑戦し、生地は古い服地を再利用する…。
   いずれも、この34年間で最大という物価上昇から家計を守るための策です。

   現在の物価高はけっして自然現象ではありません。最大の要因が安倍内閣による消費税の4月からの8%増税にあることは明らかです。いまになって内閣関係者が「消費税増税のショックを甘く見ていた」(本田悦朗・内閣官房参与、「朝日」10月2日付)と語るのはあまりにも無責任というものでしょう。

  消費税増税が「社会保障のため」との口実も破たんしています。医療費自己負担の引き上げや年金の給付減、介護の給付抑制などにもそれは如実に示されています。
  こうしたなかで、税金も含む「カネ」の問題で閣僚が辞任せざるを得ないほど疑惑を招きながら、生活防衛に追われる国民にはさらなる増税を課す――これほど厚顔無恥なことはありません。消費税の10%増税は直ちに中止すべきです。

2014年10月16日木曜日

2014年10月15日水曜日

集団的自衛権ではなく、9条の精神を広げるとき

  日本の安全保障政策の大転換を一段とすすめるもの――自衛隊と米軍の協力の指針(ガイドライン)再改定に向けた日米両政府による「中間報告」(10月8日)を一読しての感想です。安倍内閣の集団的自衛権行使容認の閣議決定(7月)を「適切に反映」することが明記されていたからです。

  集団的自衛権の議論で安倍晋三首相は、ペルシャ湾での機雷掃海への自衛隊派兵を「あり得る」と公言しています。しかし現行の日米安保条約は日米の共同行動について、日本の領土内でしか発動しないとされています。集団的自衛権の行使容認を反映した「ガイドライン」にもとづいて、日本の米軍支援を世界規模に広げることは、安保条約にさえ反しているのです。

  そもそも軍事力が国際問題を解決せず、矛盾を広げることは歴史の教訓です。べトナム戦争では米国は50万もの兵士をベトナムに投入しましたが、撤退を余儀なくされました。アフガニスタンやイラクの戦争でも米国は計6500人以上の兵士を失い、「戦争疲れ」が深刻です。

  これに対して日本国憲法の9条のもとで、自衛隊は外国人を殺した経験がないし、外国の武力で殺された経験もありません。これは戦後の先進国のなかでは日本だけです(後藤田正晴元官房長官、雑誌『世界』2005年8月号)。
 
  いま憲法9条はノーベル平和賞の有力候補にまでなりました。集団的自衛権や「ガイドライン」ではなく、9条の精神をいっそう広げてこそ、世界の平和に貢献します。

イクラは母の味

秋鮭の生筋子からつくるイクラ。北の味覚の定番です。私の母もこの時期、よく醤油漬けのイクラをつくりました。「新鮮な生筋子を使い、醤油は1、2滴入れてつくるのがコツ」といい、薄味が特徴でした。

 就職して家を出ると、母はいくつもの空きビンにイクラを詰め、送ってくれました。まろやかな旨味を堪能したものです。

 今晩、ロールキャベツのスープにイクラを入れて(写真)食べました。母の三回忌で帰省したさい、弟の妻が自家製の同イクラをみやげに持たせてくれたのです。母の味と似ていると思いました。

2014年10月12日日曜日

どんぐりの実がたくさん落ちていました

きょうは午前中、町内会による児童公園の清掃活動がありました。参加者約30人は小さい子どもがいる世帯にとどまらず年配の人も。
  どんぐりの実がたくさん落ちていて秋の風情でしたが、雑草は手だけでは採れないほど地面にしっかり根を張り、カマの助けを借りました。
  普段顔を合わせない人ともいっしょに雑草をゴミ袋に入れながら、「雨が降らなくてよかったですね」。気持ちのいい作業になりました。(写真は清掃を終えた児童公園)

2014年10月10日金曜日

大学脅迫 どんな理由でも許されぬ

日本軍「慰安婦」報道にかかわった元朝日新聞記者が非常勤講師として務める北星学園大学に脅迫文が届いた問題。座視するわけにはいきません。同大学を支援する識者らの会が結成されたことは心強い限りです。

  今回、大学には講師の解雇を執拗に要求するとともに、「辞めさせないと学生を痛めつける」「ガスボンベを爆発させる」との脅迫がありました。講師の長女(高校生)に対しても写真を実名入りでネット上にさらし、「自殺するまで追い込む」などの攻撃を加えています。
  従って同問題をめぐる視点で目にした「背景に社会への不満も重なっている」には、違和感を覚えざるを得ません。

  なぜなら、仮に「社会への不満」があったとしても、言論の報道に対して言論で応えるのではなく、暴力や威迫で脅かす行為は、表現の自由や大学の自治をじゅうりんし、家族の生命さえ奪いかねない卑劣な攻撃です。脅迫罪、威力業務妨害にも相当する犯罪といっても過言ではないでしょう。
  また今回の行為は、「異質なものを重んじ」る(北星学園大学基本理念)などの精神にも示される民主主義の豊かな発展を脅かすものです。多少とも正当化するのではなく、毅然とした対応こそ求められています。

  そもそも日本には言論や表現が暴力的に抑圧されるという痛苦の過去があります。第二次大戦中の「横浜事件」では雑誌『改造』掲載の論文をきっかけに、中央公論社や朝日新聞社、岩波書店などの関係者約60人が逮捕され、4人が獄死。また、作家小林多喜二が拷問死するという弾圧もありました。こうした歴史を繰り返してはなりません。
 
  言論への暴力はいかなる理由があっても許されぬ―今回の大学脅迫問題ではこの思いをあらたにしています。

2014年10月6日月曜日

アイヌ語 ファッション雑誌にも



 秋の青空が広がる一日、北海道白老町のアイヌ民族博物館を訪れました(写真は同博物館前庭とポロト湖)。

 「北海道や東北北部、サハリン南部、千島列島には、和人やロシア人が住む以前から、独自の言語と文化をもつ先住民族、アイヌが暮らしていました」(博物館しおり)
 
 アイヌとは人間を意味するアイヌ語のこと。現在も名乗り出ている人だけでも北海道に約2万4000人、東京に約2700人が住んでいるといいます。
 
 北海道の多くの地名の語源はアイヌ語です。札幌はアイヌ語でサッ・ポロ・ペッ、「乾く・大きな・川」の意味です。
 アイヌ語は語感が柔らかいことも特徴です。ファッション雑誌「non-no」(ノンノ)はアイヌ語の「花」という言葉だそうです。同誌の創刊号(1971年)は命名の意図について、「北海道の原野に咲く野生の花をイメージして名づけました。素朴な愛らしさ、永遠にかわらない美しさ…私たちはノンノをそうした雑誌にしたい」と記しています。

 葦(よし)づくりのチセ(家)のなかで聴いた女性のイフンケ(子守唄)も、子どもの健やかな成長を願う親の慈愛が伝わってくるようでした。
 また、博物館の外ではテレビのCMに出ている白い犬とそっくりの犬が飼われていました。それもそのはず、CMの犬の娘とのこと。同犬がアイヌ犬(北海道犬)だということも知りました。
 博物館のみなさん、イヤイライケレ(ありがとうございました)。