2015年6月30日火曜日

日米安保やPKO法に国民的理解がある?

 世論調査で反対が賛成を上回る安保法案。安倍晋三首相は、1960年の日米安保条約改定や92年の国連平和維持活動(PKO)協力法も当初は反対が多かったが、「実施されるなかで国民の理解が広がった」と強弁しています(6月26日、衆院安保特別委員会)。安保法案を反対世論が多数でも強行的に成立させたいとの反国民的な思惑がにじみ出ています。併せて、首相が触れようとしない歴史的事実やそのごの展開に照らすと、発言の虚構ぶりが浮き彫りになります。

60年安保で総辞職した岸内閣
 まず60年安保問題。日本をアメリカのアジア侵略政策の前線基地にしようとする同問題には、国民の反対運動が空前の規模で広がりました。連日のように数万、十数万のデモや集会、ストライキが続き、反対署名も2千万を突破。当時の岸内閣は国民から孤立し、新安保条約批准の直後、総辞職せざるを得なかったのです。
 反対運動で育まれた革新的・民主的なエネルギーはそのご、革新自治体づくりやベトナム侵略戦争反対、沖縄返還、原水爆禁止、公害反対などの運動の発展に結びつきました。
 そして現在、日米安保条約の運用の代表例といえば、沖縄・辺野古での新基地建設計画です。これへの保守・革新の枠を超えた島ぐるみの反対運動が全国的支援を受けて展開され、各種選挙でも相次ぎ勝利を収めています。同計画に関わったカート・キャンベル前米国務次官補も、「このような反対意見が出ていることは、我々にとって立ち止まり、考えさせられる状況だ」(「朝日」6月20日付)と語り、見直しを示唆せざるを得なくなっています。

PKO(国連平和維持活動)法の犠牲者に「胸が詰まる」
 自衛隊員の海外派遣に道を開いたPKO協力法。そのごの経過をみると、安倍首相のような自慢は到底できません。
 1993年、カンボジアで停戦合意が維持されていると言われるなか、パトロール巡回中の文民警察官が身元不明の武装集団に襲われ、犠牲となりました。同法成立に宮沢内閣の官房長官として関わった河野洋平元自民党総裁は、現在もそのことにさいなまれていると告白し、安保法案の成立を急ぐ安倍首相に警告を発しています。
 「カンボジアにPKO派遣した高田晴行警視が、現地で撃たれて亡くなった。葬儀の場には若い夫人がいて、小さい子が駆け回っていた。政府の指示で派遣した人が死んだ。大変なショックだった。責任の重さを思い知り、今も胸が詰まる思いでいる。安倍首相にも、その重みを考えてほしい」(「週刊朝日」7月3日号)

 国民の反対を押し切って成立させた条約や法案は、国民から怨嗟(えんさ)の声を浴び続ける宿命にあります。米国など他国同士の戦争に参加する安保法案にあっては、そのことがいっそう明らかでしょう。(写真=戦争法案を廃案にと、3万人が国会を包囲した行動、6月24日)

2015年6月25日木曜日

コールの力強さは想像以上

 一度参加したかったといいます。
 国会議事堂を約3万人(主催者発表)がぐるりと取り囲んだ24日の安保法案反対行動=写真。所用で上京中、初めて参加した北海道の青年(36)に話を聞く機会がありました。
 驚いたのは、参加者の真剣な表情と訴え。「戦争する国ぜったい反対!」「安倍政権いますぐ退陣!」などのコールの力強さは想像以上だったといいます。
 青年自身、日本が攻撃もされていないのに、他国の戦争のために武力を使う安保法案の理不尽さにあきれています。対象になりかねない徴兵制の導入も不安です。最近は親しい友人に会うと、すすんで議論のテーマにします。

 国会包囲行動では、訴える声が国会周辺のどこにいてもスピーカーから聞こえました。炊き出しもありました。
 これまでにない刺激と連帯感を覚え、主催側の努力に心を揺さぶられた青年は、1000円札をカンパ箱に。
 「もし大金持ちになったら、多額のカンパをする先が見つかったのも、今回の収穫です」と言って明るく笑いました。

2015年6月24日水曜日

絵本『あなたこそ たからもの』と安保法案

 近刊の憲法の絵本『あなたこそ たからもの』(文・伊藤真、絵・垂石眞子、大月書店)を読みました。憲法を子どもに手渡すきっかけにというのが刊行理由ですが、国政の焦点である安保法案の違憲性をわかりやすく示す冊子でもあります。

立憲主義に背を向ける「安保環境」論
 安倍政権は、安保法案の根幹にあたる集団的自衛権行使の根拠に、安全保障環境の変化を持ち出しています。集団的自衛権とは日本が攻撃を受けていないのに、自国防衛と称して他国に武力行使することです。
 絵本は、こうした政府の主張に照らして、憲法にもとづく政治=立憲主義の意義を指摘します。
 「わたしたちが、えらんだだいひょうも、いつも、ただしいことをするとは、かぎらない。だから、ほんとうにたいせつなことをけんぽうに、書いておくことにしたんだ」
 まさに「安全保障環境の変化」なるものは政府の判断です。環境が変われば自衛権の範囲が広がったり狭まったりするというのでは、法の支配がなくなります。 
 従って絵本は「たいせつなこと」=平和のあり方について、こう説明します。
 「にっぽんはむかし、せかいのくにぐにとせんそうをしたんだよ。あいてのくにのひとを、たくさんころしたし、ひどいこともした。もちろん、にっぽんのひとたちも、たくさんしんだ。せんそうは、かってもまけても、ひとをころす。…だから、せんそうにまけたあと、けんぽうにかいた。『もうせんそうはしません。ぐんたいもいりません』」
 そうです。憲法は、軍事力で国民を守ることはできないとの反省に立って、戦争と武力行使を永久に放棄し、軍隊や交戦権を認めていません。日本は海外で武力行使するうえで必要な道具も憲法上の資格もない以上、集団的自衛権など、もともと行使できるわけがないのです。そして、その立場にたつ平和国家としての70年間の歩みは、世界から信頼を得る源になってきました。

戦争こそ最大の人権侵害
 絵本は憲法の値打ちについて、とりわけ「個人の尊重」(13条)に光をあてています。
 「ひとりひとりに、かけがえのない いのちとこころがある。ほかのだれともくらべられない。あなたは、せかいでたったひとりの、たいせつなそんざい。あなたこそ、たからもの。それをわすれないで」
 ここから浮き彫りになるのは、いのちや権利を根こそぎ奪う戦争こそ最大の人権侵害であるということです。
 「海外で戦争ができる国」をめざす安保法案。人間の尊厳を守るためにも、反対世論を広げることがいよいよ重要です。(写真=絵本『あなたこそ たからもの』)

2015年6月15日月曜日

歴史的な誤りを犯すな

 戦争にさらに近づこうというのでしょうか。科学兵器が発達する現代の戦争では勝者も敗者もなく、廃墟だけが残ります。恐ろしいことです。
 中谷元・防衛相は衆院の安全保障特別委員会(6月10日)で、集団的自衛権の行使を容認した憲法解釈について、安全保障環境がさらに変化すれば、再び変更する可能性があるとの認識を示しました。
 憲法より、自分たちの安全保障の考え方が上であると言わんばかりです。国家権力を抑制する憲法の立憲主義に背を向けて、集団的自衛権行使の範囲がいっそう拡大される懸念は否定できません。

狙いは米国の戦争にいつでもどこでも協力すること
 だいたい、「安全保障環境の変化」なる実態は何か。日本が攻撃を受けていないのに、他国の戦争に参戦する集団的自衛権の行使の理由に安倍政権はそれをあげていますが、中谷防衛相は「グローバルなパワーバランスの変化」(11日、参院外交防衛委員会)など抽象的な説明に終始しています。国民の生命や日本の存立を根本から脅かすことの証明などはまったくできません。日本が直接攻撃を受けていない状況だけに、それは当然といえば当然です。世界で集団的自衛権が行使された事例14件のほとんどが他国の領土で行われています。
 要は集団的自衛権ありきです。その行使を眼目とする戦争法案の真の狙いが、米国の戦争にいつでもどこでも軍事協力することにあるからです。

非人道的な弾薬の輸送に手を貸すことに
 実際、戦争法案は、米国の要求に従って自衛隊が弾薬の輸送・提供まで行うとしています。これまで政府も他国軍の武力行使と一体化するとして見送ってきた戦闘支援であり、非人道的で残虐な弾薬の輸送に手を貸すことになりかねません。
 2003年からのイラク戦争で米軍はクラスター爆弾やナパーム弾、白リン弾などを使用しました。イラク派兵訴訟弁護団の川口創・事務局長によれば、クラスター爆弾の地雷化した子爆弾によってイラクの多くの子どもらが命を落とし、破壊力抜群の焼夷弾であるナパーム弾で多くの民間人が焼殺。イラク中部のファルージャでは死亡者数が少なく見積もっても2080人と、イラク暫定政府から発表されています。
 集団的自衛権の行使とその拡大の危険性は、言葉に尽くせないものといっても過言ではないでしょう。

集団的自衛権の禁止は普遍的な到達点 
 そもそも日本国憲法9条1項は武力行使と戦争を永久に放棄しています。続く同2項は一切の戦力の保持と国の交戦権を否認しています。現憲法下、海外で戦争する集団的自衛権の行使は、解釈をどんなに変更しようとも不可能です。
 あの十五年戦争は「自存自衛」、日本が生きるために等の口実ですすめられました。この反省に立つ憲法前文が訴える通り、政府の行為による戦争の惨禍を二度と起こさないとの平和への決意は限りなく重いものがあります。集団的自衛権行使の否認は、時々の状況を超えて維持されるべき普遍的な到達点といえます。
 中谷氏は2013年8月の月刊誌の対談で、集団的自衛権についてできるとは言えないと述べつつ、「政治家として憲法解釈のテクニックでだましたくない」と語っていました。歴史的誤りを犯さないためにも、その“初心”に立ち戻るべきではないでしょうか。(写真=「平和」の字で彩られた花壇)

2015年6月1日月曜日

鮮烈なしその香り

 食料品店で買い求めた赤しそで、妻がジュースを作りました。
 しその葉は水洗いし、煮出すと、色素が落ちて緑色に変身。
 完成したジュースは透明感のあるルビー色です。効能は食欲増進や整腸作用などで、疲れも取れるといいます。
 試飲すると、鮮烈なしその香り。夏を乗り越えるジュースです。